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2009/12/23 (Wed) サンタクロースの幸福

久々に妄想カテゴリです。
奥さんのPL様のブログ(無断リンク)を拝見し、勢いで書いたものです。
奥さんPL様以外の人が読むと、クロウ・クルワッハの鼻息に飛ばされる呪いが発動します。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

結婚は本当にいいものだ。人生の墓場だなどとんでもない。恐ろしいくらい幸せだ。
特に、聖夜祭の近づいた今の季節は。

可愛らしく、若い妻。
結婚して初めての聖夜。
外には雪がうっすら積もり、部屋には飾り付けられた美しいツリー。
オレンジ色のキャンドルの明かりに照らされた寝室。
まだ幼さの残る妻は恥ずかしがって、いくら誘っても未だに風呂もベッドも一緒に入ってはくれないが、聖夜のロマンチックな雰囲気で押せば、きっと何とかなるはずだ。
ムードはばっちり。シチュエーションもばっちり。あとは少し尖った彼女の耳に愛の言葉を囁いて、桜色の唇に口づければ……すべてうまくいくと思っていた。
1週間前までは。

ラヴィがまだ、サンタクロースを信じている。

これを知ったときのジルベールの衝撃といったら。
確かにラヴィはまだ幼い。まるっきり子供ではないが、大人とは絶対に言えない年頃だ。
しかも、同年代の他の女の子に比べても純真で清楚で照れ屋で…ああ、違う。ノロけている場合ではない。ともかく、サンタを信じていると言われれば、むしろ何故今までその可能性に気付かなかったのかと不思議なくらいではあった。

ああ、前もこんなことあったな…。
ジルベールは遠い目で過去を回想する。

年の離れた弟が、割と遅くまでサンタの存在を信じていた。
自分はその時、既に思春期も終わろうとしていた頃だから、サンタからの贈り物はとうに途絶えて久しく。
ただ、母と亡き父の当時の苦労を想像して有り難く思うのみで、聖夜といえばガールフレンドを夜のデートに誘うための口実に過ぎなくなっていた。
しかし、せめて弟が自然と気付くまでは、と忙しい母親に代わって毎年枕元にプレゼントを置くのは、ジルベールの役目だった。
甘んじていたのは、弟を可愛がっていたせいもあるし、こういう夢は大事にするべきだと何となく感じていたせいもある。
何故なら、サンタが存在する夢だなんて、一度覚めたら二度と見ることなど出来ないからだ。
「サンタなんて居ない」と聞いて、怒っている弟に必死に同調し、「サンタの振りが大変だ」とぼやく大人たちの声から遠ざけ、デートから帰った後、弟の枕元に、母親が用意したプレゼントをそっと置く。ここまでがジルベールのクリスマス。
それももう、随分前に終わったと思っていたのに。



結局、その年、ラヴィのサンタに対するリクエストは「サンタさんが来たという証」だった。
証。手土産。
証も何も、サンタなど居ないのに証なんてどうすれば。
ジルベールは焦った。
家に居候しているルームの毛を引っこ抜いて、サンタのヒゲだと言おうか。
それとも、ジャイアントの知り合いに頼んで手形を取り、サンタの手形だと言い張ろうか。それとも…。
一時は絶望しかけたが、相談に応じてくれた義理の兄の一言で情勢は変わった。
「雪の結晶の…オブジェかなんか…。お前、そういう珍しいものには詳しいだろ?何かツテはないのか?」
雪の国から来たサンタ。それは義理の兄が、幼いラヴィに何度も何度も繰り返し読み聞かせた物語。
彼の手土産に、雪の結晶はあまりにも似つかわしく思えた。

ジルベールは夜の街を走った。時折、薄く積もった雪に足を取られながら走った。
そして港のそばのガラス職人の工房の扉を渾身の力で叩き、寝ぼけ眼の職人にすがりつかんばかりに頼んだ。
曰く
雪の結晶の形をしたガラスのオブジェを、あと3時間で作ってくれ。

普段なら絶対に断られただろう。しかし工房のおっちゃんは、この日、息子の縁談がまとまって機嫌が良かった。そして、たまたま急ぎの納品があったせいで、工房の火はまだ落ちていなかった。
3時間後、ジルベールは金貨数枚と引き替えにクリスマスプレゼントを手に入れた。
そして、また夜の街を走る。
雪はさっきよりずっと激しくなり、風と共に外套の肩や頬を滑り、後方へと流れ飛んでいく。
ラヴィが礼拝に行くために起きる時間まで、あと1時間。
見慣れた市場の脇を駆け、一軒ずつ、玄関先にカンテラの灯る冒険者街の目抜き通りを走り抜け、さっきまで相談に乗ってくれていた義兄の家の前を通り過ぎ、見慣れた小路に走り込む。
我が家の窓に、まだ火は灯っていない。ラヴィはまだ眠っている。
間に合った--。

それから先のことは、ジルベールはあまり覚えていない。
多分、外套姿のまま眠っているラヴィのベッドに行き、枕元にプレゼントを置いて…すぐに眠り込んだのだろう。気が付くと、ベッドに凭れかかるような姿勢で眠っていて、背中に山ほど毛布が掛けられていた。
多分、起きたラヴィが自分を起こそうとして断念し、風邪をひかぬようにありったけの毛布を掛けてくれたのに違いない。
ベッドの上を見ると、シーツはきちんと整えられていて、もぬけの殻だ。敬虔な白の教徒であるラヴィは、とうに朝のミサに出かけたのだろう。
ここまで考えて、ジルベールの頭の中に昨晩のドタバタが甦った。
ラヴィは、サンタからのプレゼントをどう思っただろうか。
喜ぶ顔をその場で見たかったが…。
少し拍子抜けした思いで山のような毛布から抜け出し、伸びをしたジルベールの目の端に、何か赤い物が映った。

何やろ、これ?
ジルベールはぼんやりした頭でそう思い、腰を屈めて、シーツの上に置いてあったそれを手にとった。
真っ赤な毛糸で編まれた靴下。中に薄いピンクに染められた羊皮紙に包まれた、小さな箱が入っている。

七色のリボンを結んだそれは…
ドキンとジルベールの胸がひとつ鳴った。

何これ、クリスマスプレゼント?俺に?

え?何で?いつのまに?

愚問だと分かりつつ、そういう思いがぶくぶくと心の底からわき上がってくる。
勿論、起きたラヴィが、寝ているジルベールの傍に置いたのだ。
急く気持ちを抑えながら、丁寧にリボンと包み紙を取り去ると、箱の中から現れたのは、凝った文様が彫り込まれた銀製のプレートに、美しい瑪瑙があしらわれたタリスマン。
手の中のそれを、ジルベールは暫しじっと見つめた。
異国情緒溢れる、ジルベール好みの品だ。
多分、自分の行きつけの骨董品屋で買ってきてくれたのだろう。小さな世慣れないラヴィが、薄暗く敷居の高い店で、頑固者の店主から話を聞きながら選んでくれたのだと思うと、鼻の奥がツンとした。
「ジルベールさまは大人さんで、サンタさんが来てくれませんから、ラヴィが代わりに差し上げますね」
数日前にそう言って笑った顔を思い出す。
と同時に、ジルベールの胸中に、ある冬の朝の光景がまざまざと甦った。

父親が死んで、最初のクリスマスの朝。
朝の光に照らされた部屋の中、枕元にぽつんと置いた靴下は空っぽだった。

今思えば、母親も父親が死んで動揺していたのだろう。まだ幼い弟はともかく、兄である自分を子供扱いする余裕はなかったに違いない。
期待していたわけではなかった。
サンタが居ないことには気付いていたし、枕元に靴下を置いたのも、母親がプレゼントを用意してくれていたら悪いと思ったからだ。
しかし、靴下が空だったのを知ったとき。
もうお前は子供ではない。子供でいてはいけないのだと、誰かから宣言されたような気がしたからか、父親は本当にもう居ないのだと思い知ったからか、慣れ親しんだ子供の世界から、何もかも変わってしまうことへの恐怖感からか、あるいはその全部のせいか。
ジルベールはほんの少しだけ、涙をこぼしたものだった。
父が死んだ年を境に、自分の靴下はぽっかりと空のまま。

それがどうだ。
もう二度とないと思っていた冬の日の朝のプレゼントが、突然自分の手の中に戻ってきたことに対する驚きと困惑、そして喜びがない混ぜになった気持ちで、大きく息を吐く。
自分には、大事な家族が出来たのだ。自分だけの、新しい家族。

結婚が人生の墓場だなんて、とんでもない。
ジルベールは窓を開けて、冷たい空気に顔を晒した。
聖夜。
それは、誰かが誰かを思い遣る日。大切な人の夢を、全力で守ろうとする日。その人の笑顔を、どんな日よりも望む日。

帰って来たら、ラヴィに口づけて、プレゼントのお礼を言おう。そして、サンタからのプレゼントをどう思ったか聞いてみよう。
早く、早く帰っておいで。
そして、二人でクリスマスの挨拶をしよう。

ハッピー・メリー・クリスマス。

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comment











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うぅ…。 

泣ける…。
なんて切ない人物ですか、ジルさま!!(抱きかかえ)年長者というのは、何かと大人扱いされてしまうものですよね、家族の中で。と、偉そうに言っておきながら、家族の中で末子だった為、甘やかされて育ったゆきうさぎが通ります。
ところどころ、私の駄文とリンクして下さっている文にも感動…(世話ねぇな)

ジルさまが幸せならば、ラヴィも幸せなのです♪

2009/12/23 14:17 | ゆきうさぎ [ 編集 ]


メリークリスマスなのです 

リンクさせて頂いたというか、パクリじゃねえかって感じで…す、すみません…。
いやー、何かジルベールもちゃんとラヴィさんというサンタクロースから色々な物をもらっているのだろうな、と思って、駄文を書き連ねました。
何か幸せそうでいいなー、あの人たち。
背後は食中毒で、クリスマスは流動食しか食えないというのに(涙)

母子家庭のお兄ちゃんは色々大変そうですよね…。
ゆきうさぎさんは末っ子なのですねー。私は長女ですが、大して苦労はしてないです(笑)
とにもかくにも、お読み下さって有り難う御座いました~!

2009/12/24 12:43 | 天神橋 [ 編集 ]


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