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2010/12/14 (Tue) 闇に浮かぶもの

すごい久々に自PCの妄想小話です。
そういうのがお好きでない方は回れ右です。
ひたすら長くてどっぷり暗いです。

冴え冴えとした白い月が暗闇を照らしている。
既に子の刻は過ぎているだろうに、通り過ぎてきた神楽の街には明々と灯がともされ、未だに多くの人々が雑踏を行き交っていた。
しかし郊外にさしかかった今は、砂利や枯れ葉を踏む自分の足音と、息遣いの他に聞こえる物音はない。
単調なその音を聞いていると、今まで意識していなかった疲労感がどっと膝裏や肩甲骨のあたりにのし掛かってくるようで、清顕は大きく息を吐いた。
月は闇を照らしているのにその冴えた面(おもて)は冷淡な女のようだ、と思う。冷えた空気を暖めもせず、ただ手の届かぬ場所に無感情に存在するだけだ。

昼間に戻ればよかった。
清顕は胸の内で後悔した。
開拓者ギルドで請け負った依頼を終わらせてすぐに家に戻ろうとしたのが悪かった。昼間なら冬とはいえ陽射しもあり、ここまで手指がかじかむこともなかった。
それにこうして底冷えのする闇の中をひたすら歩いていると、考えなくてもいいことまで考えてしまう。
闇に呼び起こされた数時間前の記憶が、ふつふつと気泡のように胸に浮かび上がってくる。


----それはよくある依頼だった。

依頼人はある武家の次男。
長男より文武全てで優れていた彼は、彼の意志とは無関係に周囲から武家の跡継ぎとして将来を嘱望されていた。
それを妬んだ長男が、人を使って次男の妻と娘を拐かし、陵辱し、無残に殺して死体を川に投げ入れたのだ。
次男は憎しみと悲しみに打ち震えながら、開拓者ギルドに依頼を出した。妻子の仇をとってくれと。

妻子を殺したのが兄だという確証はなかったが、開拓者が調べればすぐに足がついた。
程なく証拠も揃い、調査を始めた二日後には犯人が兄だということに疑いを差し挟む余地はなくなった。
そして数時間前、仲間と共に清顕は長男が根城にしている店を急襲したのだ。

清顕が刀を抜くと、男は命乞いをした。
自分がどれだけ幼少時から不遇な目に遭ってきたか、周囲から不当に蔑まれ、出来損ないと言われ続けてきたかを訴えた。
このように生きてきて弟を憎まぬ兄が居ようかと叫んだ。血を吐くようなそれらの言葉。それはまさしく、その男の本音であったろう。

弟を憎むのは筋違いだ、と言うのは簡単だった。
無関係の妻子を殺しているのだから、長男に言い逃れる余地はない。
次男だって、最初から兄を蹴落とそうとして生まれてきたわけではないだろう。
しかし清顕は長男に掛ける言葉を持っていなかった。

自分にも、望むと望まざるとに関わらず、踏みつけにしてきた人間が居る。彼らはこの長男のような目で清顕を見た。炎のような呪いの言葉を吐かれたのも一度や二度ではない。

「なぜお前でなければならないのか」と。

持つ者と持たざる者は傷つけ合い、少しずつ軋み、歪んでいく。剥き出しの憎悪や、上辺だけの追従にさらされ続けて、自分もすっかりいびつな心になってしまった。

自分の目の前で怯え、みっともなく震え上がっているこの男と、自分とは一体何処がどう違うのか。

誰かを殺したい程憎んだり、殺される程憎まれたり。そしてその両方ともが暗闇の中を歩き続けねばならない。
だとしたら、持つ者と持たざる者の違いは何なのか。

去来する様々な思いに蓋をして、清顕は地に這い蹲る男の胸に深々と刃を突き立てた。
鮮やかな血を口と鼻から吹き出しつつ、男は絶命した。煌々と憎しみを宿した目を閉じもせずに。
自身の血にまみれて横たわる男を、清顕は無感情な目で見下ろしていた。
まるで、自分の死骸を見ているようだと感じながら。



長く暗い道をずっと歩いてきた気がする。
一体何処まで来たのだろう。そろそろ家に着いてもおかしくない頃だ。
それにしても寒かった。家に戻って、一刻も早く寝床に潜り込みたいと強く思う。
清顕は自分の脇腹がじっとりと濡れていることに、そこで初めて気がついた。目を凝らしてみると血は確かに自分の腹から滲んでいる。
一体いつの間に怪我をしたのか、清顕には分からなかった。
記憶を辿ると、追いつめた男に一度体当たりをされたことを思い出す。どうやらあの時に刺されたらしい。
妙に寒かったのも、血が失われたせいだったかと納得する。
治療など明日の朝でいい。今はとにかく眠りたかった。
もうすぐ帰り着く。そうしたら何も考えずに、泥のように眠れるのだ。

清顕の目の前に小さく暖かなオレンジ色の灯りが揺れた。
ああ、帰ってきた。これで眠れる。
少しずつ大きくなる灯りを目指して、清顕は歩を早めた。ぐらりと視界が大きく傾く。
もう少し。もう少し…。



何かが落ちてきたような大きな物音で、ジルベールは長椅子から飛び起きた。
妻が冷えぬようにと掛けてくれていたらしい手編みの膝掛けが床に滑り落ちる。
「ラヴィ、何や今の音?」
「わ、わかりません。お庭の木が倒れてしまったのでしょうか…」
暖炉の前で編み物をしていたらしいラヴィが不安そうな顔で駆け寄ってきた。
ジルベールの頭に一番に思い浮かんだのは、ジルベリアからの追っ手ではないかということだった。
ラヴィの父親が彼女を取り戻しに来たのかもしれない。
ラヴィの顔を覗きみると、彼女も同じことを考えたらしく、ジルベールの袖口をぎゅっと握ってきた。

「とにかく確かめて来る。ラヴィは寝室に入って鍵かけとき」
「あ、ジルベールさま!」
ラヴィを寝室の方に押しやって、ジルベールは腰のベルトに一振りの短剣を差して階段を音を立てないよう走り降りた。玄関の扉の前で立ち止まり、扉の向こうの気配を探る。
扉の近くには誰も居ないことを確かめて、ジルベールは慎重に扉を片手で押し開けた。
「……え?」
意外な光景に、ジルベールは薄青い目を瞬かせた。
窓から洩れる僅かな灯りに照らされた中庭の一角に、黒尽くめの男がうつ伏せに倒れていた。見慣れた体つきに、ジルベールは彼の名前を呼ぶ。
「清顕さん?」
まるで木から落ちてきたかのような姿に呆気に取られつつ近づいて、倒れている清顕の傍に膝をついてみる。
僅かに開いた口の前に手のひらをかざすと、規則正しい息が触れた。
「…寝てるんかいな」
拍子抜けして、ジルベールは肩を落とした。いつもの食えない表情は何処へやら、無防備な顔で寝息を立てている清顕を見て、さてどうしようかと思案していると、背後から「きゃああああ!!」と叫ぶ妻の声。
「き、清顕さま、どうなさったのです?! ま、まさか死…」
様子を見に下りてきたラヴィが、オロオロとジルベールにしがみつく。
「いや…まあちょっと怪我してるみたいやけど、死にはせんやろ、死には」
「お怪我をされているのです?!た、大変なのです!早く中に運んで下さいませ!」
「…ラヴィー、前から思ってたんやけど、ちょっと清顕さんに優しすぎへんか?」
「こんな時に何をおっしゃってるのですか!!」

夢うつつの中で夫婦の声を聞きながら、清顕は薄く微笑んだ。
家に戻ってきたつもりなのに、明かりに惹かれる小虫のように友人の店に来てしまったことがおかしかった。
暗い道に灯っていたオレンジ色の灯り。今日死んだあの男の歩んできた道には、灯りはひとつもなかったのだろうか。
俺は違う。
俺はあの男のようにはならない。
瞼の裏に滲む暖かな灯に祈るような気持ちで、清顕は眠りに落ちた。




:::::::::::::::::::::::::::::::::::::

なげえよ!!
…はい、すみません。
本当は清顕の更に過去のエピソードなども入る感じだったのですが、長すぎてえらいことになりそうだったので途中でバッサリ。
シノビの隠れ里の総領息子で、志体持ちだった清顕はやや暗い人生だったようで。
ベタな話で申し訳なかったです。読んで下さった方すみませ…。

伊砂絵師さまに描いて頂いたシンピンを発注時にぼんあyりと考えていた話だったのですが、納品して頂いてから、更に妄想が広がった感じです。
楽しげな絵に描いて頂いたのに暗い話でごめんなさい。
シンピンの紹介と自慢はまた後日改めて!

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2010/12/14 23:37 | [ 編集 ]


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2010/12/16 23:16 | [ 編集 ]


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