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2009/01/18 (Sun) リンゴひとつぶんの嵐

キャメを見ていると、皆さんちゃんとPCの出自とか設定とかが決まっているのだなーと。
そして、私は自PCについて、あんまり考えていなかったなーと。
そんなだから、お相手さまにも妙に何考えてるのか分からない印象を与えているのかなーと思い。
真面目にエツオについて書いてみた。

そんなわけで、今回もお相手PLさま以外は読んだら依頼が失敗する呪いのテキストを下記に。
マジで失敗するんだからね!


:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「ちょっと、ジルちゃん帰って来たんだって?」
背後から話しかけられて、ラウルはカウンターの奥で振り返った。
少し遠く、店の入り口をくぐった所に、声の主である馴染みのおばさんが立っている。
「ああ、おばさんこんにちは。…ジルベールが帰って来てるって何?」
「さっき、隣の筋の骨董屋で、ジルちゃんを見たってうちの旦那が言ったから。えらくまた大きくなったらしいじゃないの」
おばさんは、ラウルの語尾にまじったほんの少しの不機嫌の欠片には気が付かず、よく通る声で楽しげに続けた。
「おばさん、ジルベールの成長期は10年くらい前に終わってるよ。あれ以上デカくなったら困る。ただでさえ場所取るのに」
「うちの旦那、子供のときのジルちゃんのイメージしかないからねえ。大きくなってからは旅に出てばっかりだったし」
おばさんは懐かしそうに笑って、店の中を横切り、つやつやとしたリンゴが山盛りになった籠をカウンターにどすん、と置いた。
「このリンゴ、今度安売りしてたら一籠分買って来てってアンタのお母さんに頼まれてたからね。今日はお母さんは?」
そう言っておばさんがカウンターの奥を覗く。
「昨日からルーアンに墓参りに出かけた。リンゴいくらだった?」
「ああ、いいよお金はまた今度で。ねえ、ジルちゃんが帰って来たら、一度うちにも顔出すように言っといてよ。じゃあね」
手を振って店から出て行くおばさんに軽く礼を返し、…ラウルはカウンターを飛び出して店の戸口をガタガタと閉め始めた。

ジルベールが帰って来たって?

どの面下げて。こうなったら居留守だ。今日は臨時休業だ。
戸口を閉めかけ、店の外の立て看板に気付いてそれも店の中に引き入れようと外に出たところで。
聞きたくなかった声が頭上から降ってきた。

「ただいまーと。ラウル、元気やったか?」

母親と同じイントネーションの、苦めの薬草汁に山盛り砂糖を盛ったみたいな声。
聞いただけで腹が立ち、ラウルは聞こえない振りで看板をずるずると店の中に引きずり込む。
「ラウルー? お兄ちゃんやでー」
「…今日は臨時休業なので、お引取り下さい」
冷たく告げて、顔を見もせずに看板と一緒に店の奥に引っ込もうとするラウルに、声の主は厚かましくついて来た。
「何拗ねてるんや?俺になかなか会えんかったから怒ってるんか?」
背が高いその男はひょい、と顔を覗き込んでくる。その言い草に更に腹が立って、ラウルは彼…実の兄であるジルベールの顔をにらみ付けた。
「そういうこと言うのは、旅先で知り合ったオンナだけにしてくれない?」
わざと歯切れ良く言ってやる。
「女の子には、これにチューとぎゅーも追加や」
いけしゃあしゃあと返し、ジルベールは閉まりかけた戸口をさっさとくぐって店の奥に入ってしまう。
仕方なくラウルも後を追って、戸口を閉めた。

「変わってへんなぁ、この店も」
ジルベールは懐かしげに店の中を見回した。
石造りの壁と、使いこまれて飴色になったオーク材で出来た棚とカウンター。
棚の上には桶や小さなブックエンド、トレイなどが並び、その全てが木で出来ている。

店は、死んだ父親が25年前に開いた。
古い家を買い取り、手作業で店に改造し、自ら木を加工した日用品や家具を売り、時には客の注文に合わせたオーダーメイド品を作った。
しかし、15年前に流行した悪性の感冒であっさりと父親は死に、店は母親が引き継いだ。
母親の苦労は並大抵ではなかっただろう。
しかし母親は二人の兄弟にそれなりの教育を受けさせ、ゆくゆくは息子たちが店を継ぐことを夢見ていた……筈だった。

ジルベールは18になってすぐに、確かに店を継いだ。
木工の腕も悪くなく、愛想もよかったのでひいきが付き、店の調子は右肩上がりだった。
兄より5つ下のラウルは、大人っぽく、如才ない兄に憧れた。
そして、自分も早く大人になって兄を手伝い、この店をゆくゆくは大店に、と将来の夢を描いたものだ。
毎日のように兄に木工を教わり、苦手な接客も何とかこなせるようになった。
そして、自分でも一人前になった、と思えた5年前。
兄は突然、全てをラウルに押し付けて、旅の暮らしに入ってしまったのだ。

「…2年もどこほっつき歩いてきたんだよ」
思い出して段々腹が立ってきたラウルは、カウンター奥の椅子に座ってぶっきらぼうに聞いてみた。
店の中をぶらぶらと見ていたジルベールは、その声音を気にした様子もなく、カウンター横の商談用の長椅子にどっかりと腰を下ろす。見ると、何やら重そうな荷物を足元に置いている。
骨董品屋に寄っていたというから、また何か色々買い込んだに違いない、と思う。
「んー、まあ色々な。ジャパンとイギリスとロシアと。あ、家は今キャメロットにあるんやけど」
「相変わらずの根無し草っぷりだな」
棚卸に集中して、適当に聞いておこうと思うが、ついつい気に障って本気で返事をしてしまう。
「ルイーズさんは?」
「…母さんは墓参りに行った。父さんの実家に顔出すだろうから5日は帰って来ないよ」
それはタイミング悪かったなー、と呟き、しかしあまり気にした様子もなく、ジルベールはカウンター前にやって来ると、さっきおばさんが置いていったリンゴを一つ掴んで歯を立てた。
「勝手に食わないでよ」
「堅いこと言いっこなしや。さっきから機嫌悪いなぁ…昔はあんなにじるべーるじるべーるゆーてついてきたくせに」
「うるさい」
リンゴを齧りながら顔を覗き込んでくる兄から、ラウルは目を逸らした。
薄い青色をした眼にまっすぐ見られると、昔からラウルは言葉が出てこなくなる。
だから、もう何年も目を合わせていない気がする。
…そもそも、兄が家に居ないのだから目を合わせようがないのだが。

大体、いつもこうなのだ。
何の前触れもなく現れては、言いたいことだけ言って風のように去っていく。
この男に何かの間違いで惚れた女はさぞかし苦労しているだろう、と思う。
「で、何の用だよ」
「ん、元気かな、て思たもんやから。店もちゃんとやってくれてるみたいやし、何も心配することなかったな」
すい、と眼を細め、ジルベールは手を伸ばすとラウルの濃い金色の頭を撫でた。
記憶にあった兄の手より、少し大きい、と思い、さっきのおばさんの言葉を思い出す。
そのせいで、払いのけるのが少し遅れた。
「あんたが気楽に旅してる間に、俺はここで苦労してんだよ」
「…そうやな。おおきにな、ラウル」
ゆるく笑って、ジルベールはリンゴを齧る。
その様子に、ラウルはふと、昔から心の隅にあった疑問をぶつけてみようかと考えた。

あんたは、自分に店を押し付けたんじゃなくて、自分に譲ったのではないか、と。

店は楽しい。木工は大好きだったし、接客も苦にならなくなった。
しかし、兄と二人だったら、自分はやめていたんじゃないかと思う。
父親が作り、母と兄が継いだ店。幼い頃はひたすら、何の疑問もなく、自分も店を手伝うと決めていた。
が長ずるにつれ、どことなく、自分のいる意味が分からない、と感じていたことは事実だ。
兄だけで十分やっていけるではないか、と。
それを口に出したことはなかった。
だが、鈍感なくせに時折妙に鋭いところもある兄は、気付いていたのかもしれない。

「ジルベール」
「ん?」
「あんた、店…もうやる気ないのか?」

漠然とした引け目が、声を小さくしてしまう。
視界の隅で、兄が瞬きした、ような気がした。
「俺、向いてへんと思うわ。丼勘定やし、木工もあんまりやらへんくなったから、ラウルにはもうかなわんやろ」
相変わらず低くて甘ったるい声で、予想通りの答え。
「それにな、今の暮らし気に入ってんねん。色んなとこ行って、色んな人に会って、珍しいもん見たり聞いたり。好きな女の子もおるし」
やたら楽しげな笑顔でそう言うから、また腹が立ってきて、ラウルは「あっそ」としか言えない。

本心が見えない男。でも単に何も考えてないだけかも、と思う。
あの薄青い目と、母親譲りの喋り方で無駄に謎めいて見えるだけなのだきっと。

「そんじゃ、またそのうちお邪魔するわ。今度はルイーズさんのおるときに」
リンゴを食べ終わったジルベールは、ごちそうさん、と言うとさっさと身を翻す。
おい、2年も家空けといて、たったリンゴ1個分かよ?
ラウルは思わず「ジルベール!」と立ち去ろうとするカーキ色の外套の背中に声を掛けた。
振り向いた薄青の眼とまともに視線が遭う。
「…なに?ラウル」
何のてらいもなく、視線を合わせっぱなしのジルベールに、半ば意地になって目を逸らすまい、と思う。
「今…何やってんだよ」
昔から生活力だけはある兄に聞くまでもなかったが、咄嗟に出たのはこの言葉だった。
旅暮らしの兄。しかし、何で生計を立てているのかは自分も母親も知らなかった。
母親は「何でもええやん、元気なら」と兄そっくりの大雑把さで、気にもしていないようだったが。
しかしその質問に、ジルベールは珍しく一瞬答えるのを躊躇したように見えた。
「んーと…」
「……」
「……地獄行ったりとか」
「……はあ?」
「…まあええやん」

こういう男だ。とラウルは溜息をついた。
いい加減で根無し草で、無駄に愛想だけは良くて女ったらしで、その上、家族にも言えない仕事をしてるとは。
すっかり呆れて、カウンター奥からしっしっ、と片手を振り「しばらく帰って来なくていいよ」と言ってやる。
「そんじゃ、元気でなラウル。今度、奥さんになる子連れてくるかも、てルイーズさんにゆっといて」
「~~さっさと行け!!」
楽しげに笑い、ジルベールが店から出て行く。

まるで一瞬。本当に、風のように去って行ってしまった。
次にここに帰ってくるのはいつなのか。1年後か、2年後か。
母親にこの話をしたら、がっかりするだろうか。
いや、やっぱり「元気ならそれでいい」としか言わないだろう。
この家で真面目なのは俺だけだ。
あとからあとから色々な思いが湧いてきて、ラウルはああ、もう、と持っていた羽ペンをカウンターの上に投げ捨てた。

だから嫌なんだ。
人の頭の中をかきまわしていく。
だからあの男は嫌なんだ。

笑いたいのか、怒りたいのか、泣きたいのか、それとも全部か。
ラウルはしばらく、カウンターに突っ伏すしかなかった。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

長い、ですね。
日曜の午後つぶして書きましたしね…。

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なるほど~。 

ジルベールさまってお店の旦那さんだったのですね。
冒険者って20歳そこそこの人が多い中、20代後半って珍しいから、何か理由があったのかなぁ、なんて思っていたのですが、経営者だったとは。
しかも似合ってる・・・。商売人っぽいです。

ところで、ジルベールさまは、お母さんの事を「ルイーズさん」と呼んでいますが、実のお母さんではないのですか??それとも、ジルベールさまならでは??

奥さんになる子・・・ってうちの子ですかね・・・?
ものすごくラウルくんに嫌われそうな予感。大反対されそうな予感。
でもラヴィちゃんは、ちょっとやそっとのことではヘコたれない子なので、意地でも仲良くなってやる!!と闘志を燃やしてそうです、こっそり。

とっても楽しく読ませて頂きました♪
過去話、最近書いてないから、書きたくなっちゃいました♪

2009/01/18 19:23 | ゆきうさぎ [ 編集 ]


Re: なるほど~。 

読んでくださり有難う御座います~。

20代後半なのは単に私の趣味なんですが(笑)、自営業の実家というのは決めてました。
一瞬だけカタギだったみたいです、はい。
ルイーズさんと呼ぶのは、「お母さん」でも「オカン」でも「お母ちゃん」でも呼び方がピンと来なかったため、名前で呼ばすかーとなっただけで、実の母親だと思います(思いますって…)。

多分、エツオの喋り方は、母親の出身地の方言なんだと。
で、3歳くらいまでその地方に住んでたので、エツオはあの喋り方なんだけど、弟は生まれたときからパリなので、標準語、みたいな。
弟は何となくリィお兄さんとは気が合いそう。
主にエツオの愚痴で。

ラヴィちゃんのことも気に入ると思うけどなー。
素直じゃないのとブラコンなので、ちょっと拗ねるとは思いますが、ラヴィちゃんが一生懸命ケーキとか作ってくれたりしたら、すぐにポキっと折れそう。
冒険者じゃないので、AFOには登場しないと思いますが、何かの参考になさって頂ければ幸いです…。
ゆきうさぎさんの書くPCさんのサイドストーリーもいつも楽しみにしてますんで、是非色々読ませてくださいねー!

2009/01/18 21:03 | 天神橋 [ 編集 ]


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